能動的サイバー防御とは?GMOの要請をきっかけにやさしく解説

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「能動的サイバー防御を政府に要請」。GMOのサイバー攻撃に関するニュースで、この言葉を初めて見た方もいるのではないでしょうか。

「国がハッカーにやり返すの?」「自分のメールまで見られるの?」。名前だけでは、何をする制度なのか分かりにくいですよね。

能動的サイバー防御は、重大なサイバー攻撃を早く見つけ、必要な場合には攻撃に使われている仕組みを止めて、被害を防ぐための国の取り組みです。

この記事では、身近なたとえを使いながら、GMOの要請の意味、制度でできること、私たちの生活との関係を説明します。

情報確認日:2026年10月26日。GMOの事案は10月24日公表の第4報・第5報を中心に確認しています。

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目次

能動的サイバー防御とは?「被害を防ぐために先に動く」こと

「能動的」は、自分から働きかけるという意味です。サイバー防御は、インターネットにつながるコンピューターや、そこで扱う情報を守ることです。

学校の防犯で考えてみましょう。校門を施錠し、不審者が入れないようにすることは大切です。それに加えて、周辺の学校と不審者の情報を共有し、危険が迫っていると分かれば、警察などが必要な対応を取る。こうした考え方に近い取り組みです。

ネットの世界でも、各社が自分のシステムを守る対策に、国や企業の情報共有、攻撃に使われる仕組みへの対処を組み合わせます。攻撃が起きる前の予防と、起きた後の被害拡大防止の両方が目的です。

なお、これまでも企業や警察は攻撃の予防に取り組んできました。「従来は何もせず被害を待っていた」という意味ではありません。

具体的には何をする?大きく分けて3つ

1.国と企業が、攻撃の情報を共有する

ある会社で見つかった攻撃の手口が、ほかの会社でも使われることがあります。そこで、国と企業が情報を共有し、注意喚起や対策につなげます。

2.通信に関する情報から、攻撃の手がかりを探す

通信とは、コンピューター同士がデータをやり取りすることです。通信に関する情報を分析し、攻撃に使われているサーバーなどを見つける仕組みが、制度に組み込まれています。

サーバーは、サービスやデータを提供するコンピューターのことです。ネット上の「仕事を受け持つコンピューター」と考えてください。

3.法律の条件を満たす場合、攻撃に使われる仕組みを止める

攻撃に使われているサーバーなどに警察が接続し、危害を防ぐための措置を取る仕組みです。これを「アクセス・無害化措置」と呼びます。

自衛隊も、海外からの特に高度で組織的・計画的な攻撃など、一定の条件の下で、首相の命令により警察と共同で対処します。どの攻撃にも自動的に自衛隊が出るわけではありません。

出典:警察庁・重大サイバー事案対処に係る警察の取組、防衛省・令和8年版防衛白書

いつから始まった?

関連する法律は「サイバー対処能力強化法」とその整備法です。制度は段階的に施行されています。

主な仕組み施行状況
国と企業の連携を強める仕組み2026年10月1日に関連規定が施行
アクセス・無害化措置2026年10月1日に関連規定が施行
通信情報の利用に関する仕組み別の時期に施行する設計。上の2つと同時に全面開始したわけではない

そのため、ニュースで「能動的サイバー防御が始まった」と見たときは、どの仕組みを指しているのかも確認する必要があります。

出典:内閣府・関係省庁会議、国家サイバー統括室・法律の説明資料(施行期日を含む)

GMOはなぜ、能動的サイバー防御を求めたのか

利用者の情報だけでなく、お金への被害も問題になった

GMOインターネットは2026年10月24日、「お名前.com デスクトップクラウド」への不正アクセスについて、第4報を公表しました。

このサービスでは、インターネット経由で、離れた場所にあるWindowsパソコンのような環境を使えます。同社は、利用者情報が外部に持ち出されたことを確認し、一部の利用者から取引口座で身に覚えのない取引の報告があったと説明しています。

攻撃者とみられる者からの金銭要求も公表しています。GMOは、民間企業だけで国境を越えた攻撃に対処する難しさを訴え、政府に攻撃の基盤を追跡・遮断し、無力化するための措置を求めました。

「発動第1号」はGMOが求めた位置付け

GMOは、この件を能動的サイバー防御の「発動第1号」として位置付けるよう、政府関係機関に緊急要請したと発表しています。

ここで確認できるのは、GMOが国に対応を求めたことです。要請を出せば、そのまま国による措置が決まるわけではありません。本記事で確認した公表資料からは、GMOの件で国が無害化措置を実施したかどうかは分かりません。

国に対応を求めることと、企業自身が被害者への対応や再発防止を進めることは、それぞれ必要です。

出典:GMOインターネットグループ・10月24日 第4報

「ハッカーに仕返しする」とは違うの?

目的は、相手を困らせたり罰したりすることではなく、重大な被害を防ぐことです。犯人を調べ、刑事責任を問う捜査とは、目的や法的な仕組みが異なります。

また、攻撃に使われるコンピューターが、攻撃者本人の持ち物とは限りません。関係のない人や会社の機器が乗っ取られ、攻撃の中継役にされることもあります。これを「踏み台」と呼びます。

住所にたとえると、荷物の差出人欄に書かれた場所だけを見て、そこにいる人が犯人だと決め付けられないのと似ています。

だからこそ、攻撃に使われている機器の特定や、措置の影響を慎重に確かめる必要があります。個人や企業が、被害を受けたからといって相手のサーバーへ自由に侵入してよい制度でもありません。

出典:国家サイバー統括室・法律の説明資料(踏み台、アクセス・無害化措置)

自分のメールも見られる?プライバシーへの配慮は?

通信に関する情報を国が扱うと聞くと、「私生活まで調べられるのでは」と気になる方もいるでしょう。これは、制度を考えるうえで大切な点です。

今後施行される通信情報利用の制度では、通信先を示す番号など、攻撃の手がかりとなる「機械的な情報」を自動的に選び出す仕組みが設けられています。独立した機関による審査・検査も行う設計です。法律は、通信の秘密などの権利を不当に制限してはならないと定めています。

監督に関わるのは「サイバー通信情報監理委員会」です。長い名前ですが、国の情報の扱いや措置が法律に沿っているか、独立した立場で確認する役割を担います。

「国が誰のメールでも自由に読める」と理解するのは正確ではありません。一方で、安心して任せられる運用になっているか、権限の使い方を確かめ続けることも必要です。

出典:衆議院・2025年3月26日 内閣委員会会議録、デジタル庁・委員会の役割に関する説明

私たちの生活はどう変わる?国の対策があっても備えは必要

ネットのサービスは、買い物、連絡、仕事など、毎日の生活につながっています。サービスを支えるシステムの被害を防ぐことは、利用者の暮らしを守ることにもつながります。

ただし、国の仕組みが整っても、すべての攻撃が止まる保証はありません。盗まれた情報や、お金の被害が自動的に元に戻る制度でもありません。

とくに、利用するサービスで不正アクセスが公表されたときは、国の対応を待つだけでなく、そのサービスの公式案内を確認してください。

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GMOの対象サービスを利用していた方へ

GMOの第5報では、取引口座のパスワード変更に加え、ログイン中の全セッションの切断も呼びかけています。セッションは「ログインしたままのつながり」のことです。

パスワードを変えても、サービスの仕様によっては、それまでのつながりが残る場合があるためです。切断の方法が分からなければ、利用している証券会社・FX会社などの窓口へ確認してください。FXは、外国のお金の値動きを利用する取引のことです。

また、取引履歴と残高の確認、提供されている場合の二段階認証の設定なども案内しています。二段階認証は、パスワードに加えて確認コードなどでも本人確認する仕組みです。

端末への影響を含めて調査中であり、利用者全員のPCが感染したと確認されたわけではありません。対象の方は、端末の確認やバックアップを含め、第5報の案内を確認してください。

出典:GMOインターネットグループ・10月24日 第5報

ニュースを読むときに覚えておきたいこと

能動的サイバー防御のニュースでは、「国が使える制度ができた」「企業が対応を求めた」「国が実際に措置を行った」の3つを分けて読むと、状況をつかみやすくなります。

今回のGMOの発表は、企業が国に対応を求めたものです。今後は、政府や関係機関が何を公表したか、GMOが利用者へどのような続報を出したかを確認していく必要があります。

難しい言葉に見えても、目指しているのは、ネットにつながる私たちの生活を重大な攻撃から守ること。そのために国ができることを増やしつつ、権限が適切に使われるかを確かめる仕組みでもあります。

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この記事を書いた人

はじめまして、「ぴろりん」です。
社会福祉法人で総務を担当しながら、IT運用管理・情報セキュリティ対応など、いわゆる「ひとり情シス」業務も兼務しています。
このブログでは、IT運用管理・PC修理・情報セキュリティ対応・資格学習など、実務で直面した課題とその解決策を発信しています。
同じような悩みを抱える方のお役に立てれば幸いです。

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