「ChatGPTやGeminiが教えてくれたURLなら、安全な公式サイトだろう」
そう考えて、そのままリンクを開いていないでしょうか。
トレンドマイクロが2026年8月20日に公開した「個人セキュリティ脅威動向レポート 2026 上半期」によると、同社のサポートセンターへ寄せられたテクニカルサポート詐欺の報告は5,499件で、前年同期比2.5倍に増えました。
同じレポートでは、ChatGPTやGeminiなど生成AIの回答を経由して偽ショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例も紹介されています。
ここで重要なのは、生成AIが危険だから使わないという話ではありません。
AIの回答や検索結果に表示されたURLも、重要なサイトへアクセスするときは別の経路で確認する。
これが、これから必要になる基本的な使い方です。

テクニカルサポート詐欺は2026年上半期に5,499件、前年同期比2.5倍
テクニカルサポート詐欺とは、Webサイト上に偽のウイルス警告などを表示し、画面に記載した偽のサポート窓口へ電話させる手口です。
電話すると、遠隔操作ソフトのインストールや「サポート料金」などの支払いを求められることがあります。
トレンドマイクロが公表した2026年上半期の主な数字は次のとおりです。
| 項目 | 確認された状況 |
|---|---|
| サポートセンターへの報告 | 5,499件(前年同期比2.5倍) |
| 偽警告サイトへ誘導するメール | 約1,338万通(165日間) |
| 1日平均 | 約8.1万通 |
| 「.jp」宛てメール | 約94% |
| 誘導先の偽警告サイト | 33,000件超 |
| 1日限りで使われた偽サイト | 約9割 |
特に気になるのは、メールの宛先の約94%が「.jp」ドメインだったことです。日本の利用者を強く意識した攻撃だったことが分かります。
また、4月中旬からは大手ECサイトや国税庁を装うメール、5月からは「人事評価」などの社内連絡を装う文面も確認されています。
つまり、家庭のPC利用者だけでなく、会社の従業員を入口とする被害にも注意が必要です。
なお、誘導先の偽サイトは33,000件を超える一方、調査対象となった4,721件の偽サイトに記載されていた電話番号はわずか11個でした。Webサイトを短期間で大量に作り替えながら、電話窓口は使い回すという運用も確認されています。
検索広告だけではない。生成AIの回答から偽サイトへ誘導された事例も
今回のレポートでは、テクニカルサポート詐欺とは別のAI関連リスクとして、利用者が頼る生成AIそのものが偽サイトへの入口になる事例も紹介されています。
トレンドマイクロによると、ChatGPTやGeminiの回答を経由して、偽ショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導されるケースが確認されました。
公式サイトのURLを尋ねる検証でも、公式ではない詐欺サイトが提示された例があり、検索結果に表示される「AIによる概要」でも同様の問題が確認されたとしています。紹介された事例については、レポート公開時点で修正済みです。
ここは誤解しないようにしたいところです。
「ChatGPTやGeminiのリンクは危険」という意味ではありません。
生成AIも検索エンジンと同じように、Web上の情報を参照して回答する場面があります。そのため、回答に含まれるURLが常に公式サイトであると保証されるわけではありません。
「AIが答えた」ということ自体を、安全性の証明にしないことが大切です。

なぜAIは偽のURLを出してしまうのか?
「AIが偽サイトのURLを記憶しているのでは?」と感じるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
生成AIは、質問に対して文章やURLを含む回答を組み立てます。サービスや利用モードによって仕組みは異なりますが、主に次のような理由で誤ったURLが混ざる可能性があります。
- Web検索や参照先に危険なサイトが混ざる:Web上には公式サイトだけでなく、偽サイトや古い情報も存在します。AIが検索結果などを参照する場合、それらを拾う可能性があります。
- もっともらしいURLを生成してしまう:言語モデルは文章と同じようにURLの文字列も生成します。確認できていないURLを、実在しそうな形で出力してしまう「ハルシネーション」が起こることがあります。
- URLが古くなっていることがある:公式サイトの移転やドメイン変更、第三者によるドメイン取得などにより、過去には正しかった情報が現在も安全とは限りません。
OpenAI自身も、ChatGPTは常に正しいとは限らず、存在しない情報源への参照などを生成する場合があると案内しています。また、ChatGPTが生成したリンクについて、リンク先を確認し、信頼できるサイトかを利用者自身でも確認するよう注意を促しています。
つまり、「AIが偽URLを保存している」と考えるより、「AIの回答生成とURLの真正性確認は別の問題」と考える方が実態に近いと言えます。
AIエージェントでは「見るだけ」から「勝手に操作する」リスクへ
さらにレポートでは、商品ページに埋め込まれた人には見えない指示により、AIショッピングエージェントが利用者の予算を30ドルから85ドルへ変更し、別の販売者へ誘導した検証事例も紹介されています。
これは「AIが間違った情報を表示する」という問題から一段進み、AIが利用者の代わりに操作する時代では、Webページ側の悪意ある指示がAIの行動に影響する可能性があることを示す事例です。
一般利用者が今すぐAIエージェントの利用をやめる必要はありませんが、購入や送金など金銭に関わる操作では、最終確認を人が行うことが重要です。
「AIが教えたURLだから安全」と考えない方がよい3つの理由
1.AIは「公式サイト保証サービス」ではない
生成AIは質問への回答を作るサービスであり、表示したリンクが公式サイトであることを保証する仕組みではありません。
特に、銀行、クレジットカード会社、ECサイト、ソフトウェアのダウンロード先、サポート窓口などは、リンク先を間違えたときの影響が大きくなります。
2.検索結果でもAI回答でも偽サイトが混ざる可能性がある
以前から、検索結果の広告や不審な検索結果を経由して偽サイトへ誘導する手口は確認されています。IPAも、サポート詐欺の偽警告が表示されるきっかけとして、不審な広告や検索結果のクリックを挙げています。
AIを使えば検索結果を直接見ずに済む場面は増えますが、「AIを経由したから安全になる」とは限りません。
3.URLが「https」でも本物とは限らない
URLの先頭がhttps://で始まっていても、それだけで運営者が正規企業だと確認できるわけではありません。
重要なのは、ドメイン名そのものが正しいかです。
例えば、企業名に似た文字列が入っているだけの別ドメインや、サブドメインを使って本物らしく見せるケースにも注意が必要です。

AIに教えてもらったURLを安全に確認する方法
AIがURLを提示したとき、すべてのリンクを疑って調査する必要はありません。
一方、ログイン、購入、支払い、ソフトウェアのダウンロードなどにつながるサイトでは、次の順番で確認すると安全性を高められます。
1.重要なサービスは公式アプリや登録済みブックマークから開く
銀行、クレジットカード、通販サイトなど、普段使うサービスは公式アプリや自分で確認済みのブックマークから開くのが最も簡単です。
メール、SMS、AIの回答に表示されたリンクから毎回アクセスする必要はありません。
2.初めて使うサービスは別経路で公式ドメインを確認する
AIが示したURLだけを根拠にせず、例えば次のような別経路と照合します。
- 公式アプリストアに記載された開発元・公式サイト
- 商品パッケージや契約書、請求書に記載されたWebサイト
- 企業の公式SNSプロフィールから案内されているサイト
- 官公庁であれば公式の組織情報や既知のドメイン
検索エンジンで調べ直す場合も、「検索結果の一番上だから公式」と決めつけず、ドメインまで確認してください。
3.サポート電話番号はAIの回答だけで決めない
特にサポート窓口の電話番号は注意が必要です。
Microsoftは、正規のMicrosoftのエラーや警告メッセージに、電話をかけるよう促す電話番号は表示しないと明記しています。
サポートへ連絡するときは、契約書、製品の公式サイト、公式アプリなどから窓口を確認してください。
4.AIに「このURLは本物?」と聞き直すだけでは確認にならない
最初にURLを提示したAIへ、そのまま「これは本物ですか?」と聞き直しても、同じ情報源をもとに回答する可能性があります。
確認するなら、AIとは独立した情報源を1つ以上使うことがポイントです。

偽のウイルス警告が突然表示されたらどうする?
テクニカルサポート詐欺では、突然大きな警告画面を表示し、警告音や音声を流して利用者を焦らせる手口があります。
まず覚えておきたいのは、画面に表示された電話番号へ電話しないことです。
IPAによると、サポート詐欺の偽警告画面が表示されただけであれば、PCがウイルスに感染したわけではなく、基本的には偽の警告画面を閉じることで対処できます。
Microsoftも、正規のエラー・警告メッセージにサポートへ電話するための番号は表示されないと案内しています。
警告が表示された場合は、次のように対応します。
- 警告内のボタンを押さない
- 表示された電話番号へ電話しない
- 遠隔操作ソフトをインストールしない
- ブラウザーのタブまたはブラウザー自体を閉じる
- 心配ならWindowsセキュリティなど、普段使っているセキュリティ機能を自分で開いて確認する
ブラウザーを閉じられない場合の具体的な操作や、Chrome・Edgeの通知を悪用した偽警告との見分け方は、以下の記事で詳しく解説しています。
Chrome・Edgeのウイルス警告が消えない|偽警告の止め方と本物の見分け方
電話や遠隔操作までしてしまった場合は対応が変わる
「偽警告が表示されただけ」と「相手にPCを遠隔操作させた」では、必要な対応が異なります。
警告を見ただけ・ページを閉じただけ
偽警告画面が表示されただけで、電話、情報入力、ソフトのインストールなどをしていなければ、過度に慌てる必要はありません。
ブラウザーを閉じ、必要に応じてWindowsセキュリティなどでスキャンしてください。
電話はしたが、遠隔操作や支払いはしていない
相手から再度連絡が来る可能性があります。着信やSMSに応じず、個人情報を伝えてしまった場合は、その情報を使った別の詐欺にも注意します。
遠隔操作ソフトを入れた・PCを操作させた
企業のPCであれば、まずネットワークから切り離し、社内のIT管理者へ連絡してください。
IPAも、組織の端末を遠隔操作された場合には、機密情報や個人情報へのアクセス状況によっては情報漏えい事故としての調査が必要になると注意喚起しています。
個人PCでも、遠隔操作を許可した場合は、使用した遠隔操作ソフトの削除、セキュリティスキャン、重要アカウントのパスワード変更などを検討します。パスワードを変更する場合は、可能であれば別の安全な端末から行います。
クレジットカードや送金で支払った
利用したカード会社や金融機関へ速やかに連絡し、取引状況を確認してください。
同じパスワードを複数サービスで使い回している場合は、他サービスも含めて変更し、多要素認証やパスキーを設定しておくと不正ログイン対策になります。
パスワード漏えい時の考え方や、使い回しをしている場合の対策はこちらでも解説しています。
パスワードの「ハッシュ値」が漏えいしたら危険?平文との違いと今すぐやるべき対策

中小企業のIT管理者がやっておきたいこと
今回の調査では、「人事評価」など社内連絡を装うメールも確認されています。
従業員への注意喚起では、「怪しいメールに注意してください」だけではなく、迷ったときの具体的な行動を決めておくことが重要です。
例えば、次のようなルールなら周知しやすくなります。
- PCに電話番号付きのウイルス警告が出たら、その番号には電話しない
- 警告画面を閉じられない場合は、まずIT担当者へ連絡する
- メールやAIが示したURLから業務サービスへログインしない
- 業務で使う主要サービスは社内ポータルやブックマークから開く
- 遠隔操作ソフトを求められた場合は、自分で判断してインストールしない
- 遠隔操作されてしまった場合は、すぐネットワークから切り離して報告する
IPAは、偽警告画面を疑似体験して閉じ方を練習できる「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)画面の閉じ方体験サイト」も公開しています。職員研修に取り入れる方法も有効です。
AI詐欺やディープフェイクを「見破れる自信がある」人は8.5%
トレンドマイクロが2026年3月25日から4月3日に、日本国内の18歳以上1,560人を対象に行った調査では、AIによる詐欺やディープフェイクを「自信を持って見破れる」と回答した人は8.5%でした。
また、「自信がない」とした人は70.4%でした。
AIで作られた文章や画像の見た目だけから真偽を判断するのが難しくなっている以上、これからは「見破る能力」だけに頼るのではなく、公式アプリ、確認済みブックマーク、別経路での照合といった行動ルールで防ぐことが重要です。
よくある質問
Q.ChatGPTやGeminiが表示するURLは危険なのですか?
すべてが危険という意味ではありません。トレンドマイクロが行った検証で、生成AIの回答から偽ショッピングサイトやフィッシングサイトへ誘導される事例が確認されたということです。
重要なサービスでは、「AIが表示したから公式」と判断せず、別経路で公式ドメインを確認してください。
Q.AIは偽サイトのURLを「記憶」しているのですか?
必ずしもそうではありません。Web検索や参照結果に危険なサイトが混ざる場合のほか、言語モデルがもっともらしいURLを生成してしまう場合があります。
重要なのは、AIの回答にURLが表示されたこと自体を「公式サイトである証明」にしないことです。ログインや支払いに関わるサイトは、公式アプリや確認済みブックマークなど別経路で確認してください。
Q.AIに聞いたURLをGoogle検索で確認すれば安全ですか?
確認方法の1つにはなりますが、検索結果にも広告や偽サイトが混ざる可能性があります。
検索順位だけで判断せず、公式アプリ、契約書、公式SNS、既知のドメインなど、独立した情報源と照合する方が確実です。
Q.偽のウイルス警告を開いただけで感染しますか?
IPAは、典型的なサポート詐欺の偽警告画面について、表示されただけであればウイルス感染したわけではなく、画面を閉じるだけで問題ないと案内しています。
ただし、ファイルをダウンロードした、コマンドを実行した、遠隔操作ソフトを入れたなど別の操作をしている場合は、追加確認が必要です。
Q.本物のMicrosoftの警告に電話番号が表示されることはありますか?
Microsoftは、正規のMicrosoftのエラーや警告メッセージに、電話をかけるための電話番号は含まれないと案内しています。
電話番号付きの警告が突然表示された場合は、表示された番号へ連絡せず、公式サポートページなどを自分で開いて確認してください。
まとめ|AIの回答も「確認して使う」が新しい基本
2026年上半期、トレンドマイクロへ寄せられたテクニカルサポート詐欺の報告は5,499件となり、前年同期比2.5倍に増えました。
さらに同社は、ChatGPTやGeminiなどの生成AIの回答を経由して偽サイトへ誘導される事例も報告しています。
これから意識したいのは、次の3点です。
- 電話番号付きの偽警告が出ても電話しない
- 銀行・EC・官公庁など重要サービスは公式アプリや確認済みブックマークから開く
- AIが示したURLも、金銭やログインに関わる場合は別経路で確認する
生成AIは便利な道具ですが、「AIが答えた」という理由だけでリンクの安全性まで保証されるわけではありません。
便利さはそのまま使いながら、重要な場面だけ確認を1つ増やす。
それが、AI時代の現実的な詐欺対策です。
参考情報
- トレンドマイクロ「個人セキュリティ脅威動向レポート2026年上半期を公開」(2026年8月20日)
- TrendLife「個人セキュリティ脅威動向レポート2026 上半期」
- トレンドマイクロ「TrendLife “AI時代のデジタルライフ”に関する調査結果を発表」(2026年5月19日)
- INTERNET Watch「テクニカルサポート詐欺が前年同期比2.5倍に急増!」(2026年8月21日)
- OpenAI Help Center「ChatGPT は真実を伝えますか?」
- OpenAI Help Center「ChatGPT generated links」
- IPA「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」
- IPA「サポート詐欺の偽セキュリティ警告はどんなときに出るのか?」
- Microsoft「テクニカル サポート詐欺を回避して Microsoft に知らせる」
※本記事は2026年8月22日時点で確認できる公表情報をもとに作成しています。生成AIサービスやセキュリティ対策の仕様、攻撃手法は今後変化する可能性があります。

