水や食料に加えて、「ネットが使えないときの連絡・支払い・情報収集」も準備しておきましょう。
2026年11月2日、防災庁の発足に合わせ、国民に事前防災の徹底を求める緊急要請が出されました。水・食料・携帯トイレなどの備蓄は、最低3日分、できれば1週間分が目安です。[1]
ただし、今回の要請がサイバー攻撃への警戒を理由に出されたとは確認されていません。地震などの大規模災害に備える呼びかけです。
そのうえで、停電や通信障害への備えは、サイバー攻撃でサービスが停止したときにも役立ちます。この記事では、スマホの充電だけでは補えない弱点と、家庭・職場で確認したい対策を整理します。
- 家族の連絡先と集合場所は、紙にも残す
- 避難先の地図や必要な情報は、通信を切っても開ける状態にする
- 少額の現金、ラジオ、予備電源を用意する
- 職場では、クラウドや業務システムが止まったときの代替手順を決める
2026年11月2日時点。政府の要請内容はFNN掲載の全文で確認しています。政府サイトの要請原文は未確認です。
政府は何を要請した?備蓄だけでなく、住まいと避難の確認も
FNNが同日10時7分に掲載した要請全文では、国民向けの対策は次の5項目です。[1]
- 住宅の耐震診断・耐震化と家具の固定
- 水・食料・携帯トイレなどの備蓄
- ハザードマップと避難場所・避難経路の確認
- 非常持ち出し品の準備
- 防災訓練への参加
備蓄日数は最低3日、できれば1週間。水は食事に使う分を含めて1人1日3リットルが目安です。例えば4人家族なら、3日分で36リットル、7日分で84リットルになります。[1]
この備蓄日数は以前から政府の防災資料でも示されており、今回初めて登場した基準ではありません。日常の買い物で少し多めに持ち、使った分を補充すると、無理なく続けやすくなります。[2]
サイバー攻撃と備蓄は関係ある?日本の要請と海外の呼びかけを整理
今回の日本の要請と、海外当局によるサイバー攻撃への警戒は別の発表です。日本の緊急要請を「大規模サイバー攻撃が迫っている証拠」と受け取る根拠は確認できません。
ノルウェーでは、重要インフラへの攻撃を想定して国民に備えを要請
一方、ノルウェー国家安全保障局(NSM)は10月29日、国家のサイバーリスク水準を「高」に引き上げたことを説明し、民間防衛・緊急事態計画局(DSB)とともに国民へ備えを呼びかけました。重要インフラへの攻撃が成功した場合、電力や水道、携帯通信、インターネットが使えなくなる可能性を挙げています。[3]
当局が勧めているのは、自治体の情報発信方法の確認、機器やモバイルバッテリーの充電、異なる携帯網の利用の検討などです。これはノルウェーでの評価と対策であり、日本の危険度を示すものではありません。[3]
生活への影響に目を向けると、災害でも攻撃でも「連絡できない」「支払えない」「必要な情報を開けない」という困り事には共通点があります。原因を混同せず、止まった機能をどう補うか考えることが大切です。
日本でも重要インフラのサイバー対策を強化
国家サイバー統括室は、2026年10月1日に重要インフラのサイバーセキュリティ対策のための統一基準が施行されたと公表しています。分野や事業者による取組のばらつきを踏まえ、対策の評価・改善につなげるものです。[4]
対策が進んでも、家庭や職場でサービス停止時の手順を用意する意味は残ります。
ネット・通信・決済が止まると、何に困る?
以下はサービス停止時に想定される影響と備えの例です。一つの事故ですべてが同時に停止するとは限りません。
| 使えない機能 | 困ることの例 | 用意しておくもの |
|---|---|---|
| 携帯通信・通話 | 家族への連絡や安否確認が難しい | 紙の連絡先、集合場所の取り決め |
| ネット・クラウド | 地図、予約情報、保存書類を開けない | 端末への保存、必要に応じた印刷 |
| 電子決済 | 店舗や決済網の障害で支払えない場合がある | 少額の現金、硬貨 |
| 家庭の電源 | スマホやルーターを使い続けられない | 予備電源、対応ケーブル |
| 受注・物流システム | 注文、出荷、配送が遅れる場合がある | 日常的な必需品の備蓄 |
例えばスマホの残量が十分でも、携帯網や決済サービスに障害があれば、普段どおりに買い物できないことがあります。端末の電源と、サービスが動くことは別の条件です。

今日から確認できる「デジタル防災」5つの備え
1.連絡先と集合場所を紙に残す
家族、学校、勤務先など、急いで連絡する相手の番号を小さな紙にまとめます。スマホをなくしたり電池が切れたりした場合にも確認できます。
連絡できないときの集合場所は、避難情報や周辺の安全を優先する前提で決めておきましょう。無理に移動して合流するより、それぞれが安全な場所にとどまる判断が必要な場面もあります。
災害用伝言ダイヤル171やweb171は、平時に使い方を練習できます。NTT東日本は毎月1日・15日などを体験利用日としています。利用に必要な電話回線やネット接続が使えるかも含めて、家族で確認しておくと安心です。[5]
2.保存した地図や書類を、通信なしで開いてみる
避難先周辺の地図、家族の連絡先、必要な予約情報などを端末に保存します。クラウド上のファイルへのリンクや、共有フォルダーのショートカットだけでは、オフラインで開けない場合があります。
保存後は機内モードにしたうえでWi-Fiもオフにして、実際に開けるか試してください。確認後は通信設定を元に戻します。地図は避難経路が読める範囲まで保存し、重要なものは紙でも持っておきましょう。個人情報を含む書類は、端末のロックや保管場所にも気を配ってください。
3.現金と、ネットを使わない情報源を用意する
カードやQR決済が使えない場合に備え、少額の現金を用意します。店舗自体が休業することもあるため、現金と生活必需品の備蓄は組み合わせて考えましょう。
情報収集には、乾電池などで使えるラジオも選択肢になります。防災用品の中に入れて終わりにせず、自宅で受信できる放送局と操作方法を確認します。自治体がネット以外にどのような手段で情報を伝えるかも、平時に調べておきましょう。
4.予備電源は「何を動かすか」から決める
スマホ用のモバイルバッテリーに加え、家庭のネット接続を維持したい場合は、ONUやホームゲートウェイ、Wi-Fiルーターなど、必要な機器への給電を確認します。NTT西日本も停電時の対策としてUPSなどによる電源確保を案内しています。[6]
ただし、自宅の機器を動かせても、回線設備や接続先サービスが停止していれば通信できません。また、バッテリー容量だけでなく、出力・端子・電圧などが機器に合うか確認が必要です。
使用時間は、電源容量のWhと接続機器の合計消費電力Wから概算できますが、変換損失や待機電力などで短くなります。購入前の目安にとどめ、手元の機器で安全に試せる範囲を確認してください。
5.予備回線は、利用する携帯網まで確認する
別会社のSIMを追加しても、同じ携帯網を利用している場合があります。予備回線を用意するなら、料金ブランドだけでなく、どの通信事業者の網を利用するか確認しましょう。
異なる網でも、広域停電や共通する設備・サービスの障害で両方使えない場合はあります。回線を増やす前に、紙の連絡先やオフライン情報を整えるだけでも、できる備えはあります。
企業・福祉施設では「システムを使わずに続ける業務」を決める
職場では、バックアップがあるだけで業務を続けられるとは限りません。復旧までの間に何を優先し、誰が判断し、どの方法で記録するかを決めておく必要があります。
IPAは、サイバー攻撃による業務停止を想定し、自然災害などを想定したBCPと連携することや、優先度の高いシステムの復旧手順を演習で確認することを示しています。[7]
- 連絡:メールやチャットが使えないときの連絡網と判断者を決める
- 業務:当日必要な予定や対応事項を、システム外でも安全に確認できるようにする
- 記録:紙の様式、記入ルール、復旧後の転記・照合方法を用意する
- 復旧:保守会社への連絡先、復旧する順番、必要な機器を整理する
- 訓練:クラウドや業務システムを使わない時間を設け、困る点を洗い出す
例えば福祉施設なら、利用者への支援を続けるため、その日に必要な情報を誰が確認し、変更をどう申し送るかが課題になります。個人情報を含む紙の資料は、持ち出す範囲と保管・廃棄方法も定めましょう。
バックアップは、攻撃を受けた端末から一緒に削除・暗号化されない保管方法も重要です。IPAの資料でも、複数のバックアップやオフライン保管、復旧手順の整備が挙げられています。保存の成功だけでなく、実際に戻せるかを確認してください。[8]
よくある疑問
政府はサイバー攻撃が起きると発表したのですか?
今回確認した要請全文は、大規模な自然災害への事前防災を求める内容です。サイバー攻撃が迫っているという発表は確認されていません。[1]
ポータブル電源があれば、ネットは使えますか?
必要な家庭内機器への給電に役立ちます。ただし、通信事業者の設備や接続先が停止していると、家庭に電源があっても利用できません。
クラウドに保存しておけば十分ですか?
停電や通信障害でアクセスできない場合に備え、必要な情報を端末や紙にも残しましょう。業務データは、情報管理のルールに沿って保存先とアクセス権限を決めてください。
まずは「通信なしで確認できるか」を試してみる
水や食料の備蓄を確認したら、家族の連絡先、避難先の地図、必要な書類を通信なしで開いてみてください。それだけでも、スマホに頼り切っている部分が見えてきます。
家庭では連絡・情報・支払い・電源を、職場では代替業務と復旧手順を確認する。普段の仕組みが止まったときにも動ける準備を、少しずつ整えていきましょう。


